チームの強化とは

 

―丸いボールを追いかけて―J2探訪記

 

■ 同じ歴史を持つ福岡と仙台

 福岡と仙台はJ1時代に同じような経験をしている。ビッグクラブのように潤沢な資金を持たないクラブは、J1を戦い抜くために実績があるベテラン選手を補強。彼らの経験と技術をバックボーンにリーグ戦に臨んだ。そして、強豪チームに果敢に挑み互角の戦いを演じるチームの姿に地元のサポーターは沸き、毎試合のように大観衆がスタジアムを訪れた。決して上位と呼べる成績は残せなかったが、それでも地元住民はチームに夢を見た。

 ところが、そんな勢いも長くは続かない。ベテラン中心の選手構成は、中心選手がケガで戦列を離れるとその穴を埋めきれず、かといって、J2降格を避けなければいけない立場では実績の無い若い選手を起用するわけにもいかない。選手は育たず、ベテラン選手は衰えを見せ、勝てる試合を落として勝ち点を失うという悪循環に陥っていく。そして福岡は2002年から、仙台は2004年から戦いの場をJ2に移すことになった。

 J2降格と同時に両クラブは育成型クラブとして新しい道を歩み始めたが、ここから微妙に違う立場を歩み始める。福岡は長期的視野に立った育成に着手。2003年から2年でJ1を合言葉に我慢の日々を過ごした。一方、仙台は長期的視野に立ちつつも、1年でのJ1復帰を重要視。昨年、J1復帰を果たせなかったことを最大の理由に契約途中でベルデニック前監督を解雇。1年でのJ1昇格を果たすために都並監督に白羽の矢を立てた。

 

■ 勝負を分けた組織力の差

 その福岡と仙台が第3節に仙台スタジアムで顔を合わせた。前半は見事な組織サッカーを展開する福岡が仙台を圧倒。仙台に何もさせないままに2−0で折り返した。後半は仙台のゲーム。1万5000人を超す地元サポーターの大声援に支えられて死に物狂いで福岡を攻め立て、あわやというシーンも作り出した。しかし、福岡は押し込まれながらも組織で守って仙台にゴールを許さず。結局、試合は2−0のままで福岡が勝利した。

 仙台サポーターにとっても、福岡サポーターにとっても、手に汗握る後半だったが、試合全体を見渡せば、組織力という点では福岡と仙台の差が如実に現れた試合だった。松田監督の下、同じコンセプトでチーム戦術を練り上げてきた福岡と、新たにチームを作り直した仙台との間に、組織力という面で埋められない差があったことは致し方ないこと。それを補うべく獲得したバロンをケガで欠いては仙台にとっては難しい試合だった。

 しかし、監督交代を断行した経緯から見れば、仙台が来年からのJ1復帰をノルマとしていることは明らかで、都並監督はチームを育てながら勝つという、場合によっては相反する2つの命題を1年間で解決することが求められている。果たして、クラブを立て直す手段として、この方法が正しいのか、それとも「急がば回れ」が正しいのかは誰にも分からない。ただ、目先だけを追い始めると、悪循環に陥ることだけは確かだろう。

 

■ 育成だけでは埋められないピースもある

 さて、2年間をかけてチームを育ててきた福岡は、いまではJ2屈指のバランスのいいチームとして知られている。その組織サッカーはJ2ではトップクラス。おそらく、今年も多くの試合で主導権を握った戦いを展開することになるだろう。しかし、問題も抱えている。何度となく指摘されている決定力不足という課題だ。「2年でJ1」という目標を昨シーズンに果たせなかった最大の理由だが、今年もこの課題に悩まされている。

 大崩れをしない組織は、先制点を奪えばかなりの確率で勝利に結び付けられる。ところが、開幕の鳥栖戦では山ほどの決定機を作り上げながら、放ったシュートがことごとくゴールマウスを外れ、痛恨の引き分けという結果で試合を終えた。その後、2連勝と波に乗ったかに思われたが、迎えた第4節の湘南との対戦でも、90分間にわたって試合を支配しながらスコアレスドロー。この試合でも決定機を決められなかったことが強く印象に残った。

 実績や経験のない選手たちを長期的視野に立ってチームを作ってきた福岡のやり方に間違いはない。若くして戦力外通知を受けた選手や、練習生としてチームに参加する選手たちに再びチャンスを与え、プロとして通用する選手を育て上げてきた実績は十分に評価できるものだ。しかし、それだけでは埋められないピースもある。これを埋めない限りJ1昇格は見えてこない。急遽獲得したグラウシオが最後のピースとなるのか。サポーターの関心はその1点にある。

 

■ クラブの共通意識がチーム強化の最大のポイント

 チームをどうやって強化するのか。それは各クラブにとって永遠の課題だ。まずは土台を作ってから勝負に出るというのは最もな理屈であるし、目の前の試合に勝ち続けることがチーム強化につながるというのも紛れのない事実だ。いずれも方法論の問題。どちらが正しいとは言い切れない。大切なことは、目的と方法論について、フロント、現場、選手が同じレベルで理解していることだろう。

 1993年のJリーグ開幕の年、当時の川淵チェアマンに「99.99%、参入はあり得ない」と言われた鹿島が、最初のステージの優勝チームとなることを予想していた人は少なかったはずだ。しかし、ジーコは優勝以外に目標はないと明言していた。何の実績もないクラブが成功するためには、最も注目を浴びる最初の年に優勝という結果を残すことこそが最大の強化につながると信じていたからだ。

 母体となった住友金属はJFLの2部チーム。そこへJリーグ入りを断念したホンダから、故宮本征勝監督をはじめとして大量の選手を補強した。そうした選手を中心に、無名だった選手を育成し、さらには長期的視野に立って若い選手たちを獲得し、代表選手へと送り出して黄金時代を築いた。クラブを支えたのはジーコを中心とする強い絆。当時のチーム関係者の誰もがテープレコーダーのように同じことを話してくれたことを思い出す。

 さて、今年はどのチームがJ1の舞台へと進むことができるのだろうか。

 

 

■ 中倉一志 氏/Hitoshi NAKAKURA

1957年生まれ。サッカーとの出会いは小学校6年生の時。偶然つけたTVで伝説の「三菱ダイヤモンドサッカー」を目にしたのがきっかけ。長髪をなびかせて左サイドを疾走するジョージ・ベストの姿を見た瞬間にサッカーの虜となる。大学卒業後は生命保険会社に勤務し典型的なワーカホリックとなったが、Jリーグの開幕が再び消し切れぬサッカーへの思いに火をつけ、1998年からスタジアムでの取材を開始した。現在は福岡に在住。アビスパ福岡を中心に、幼稚園、女子サッカー、天皇杯まで、ありとあらゆるカテゴリーのサッカーを見ることを信条にしている 

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jtoto/column/200503/at00004337.html  05/03/29

 

 

 

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