今、あえて天皇杯の存在意義について改めて考える

 83回目を数えた天皇杯サッカー選手権は、ジュビロ磐田がセレッソ大阪を下し、Jリーグ発足以降始めての優勝で幕を閉じた。会場の国立競技場は主催者発表で51,000人あまりの大観衆が集まった。試合としても好ゲームだったため、元旦の恒例行事としてはまずは成功といったところか。試合そのもののコラムを期待されてアクセスしていただいた方には申し訳ないが、今回は天皇杯というこの歴史ある大会についての存在意義について考えてみたい。

 

■4回戦の鹿島スタジアムで考えたこと

 12月20日、私は鹿島スタジアムでの4回戦、鹿島対柏の取材に出向いた。秋田選手が戦力外通告を受けた直後だったため、ホームスタジアムでは見納めとなる試合だ。当然、スタジアムには大勢の鹿島サポーターが陣取り、彼の最後の姿に歓声を送るのだろうと思った。ところが、である。観衆は8012人(主催者発表)でおそらく半分はゴール裏のサポーター席にいただろう。メーンやバックスタンドはガラガラ。完全な拍子抜けだった。ちょっとどう考えれば良いのかわからず、私は秋田選手の試合後のインタビューもそこそこに切り上げ、家路を急ぐファンに話を聞いた。

「(観衆が少ないって?)でもさ、サポーター席は満員だったでしょ。それで良いんじゃないかな。他の席が少なかったのは、そうだなー、みんな年末で忙しいんじゃないの」

「天皇杯ってさー、自分の周りでサッカーにあまり詳しくない人は、元旦の決勝1試合のみの大会だと思っている人もいるよ。知名度が薄いんじゃないかな」

「今日の試合はホームゲームという意識が少ないんじゃないかな。僕らにとっては、Jリーグがあくまでも本筋ですから」

 正直言ってちょっとびっくりした。「今日の試合はホームゲームという意識が少ないんじゃないかな」という人までいたからだ。確かに天皇杯はホームアンドアウエー方式ではないので、「たまたま4回戦の会場に鹿島が決まっていた」というふうに冷静にとらえているのかも知れない。そう考えても、どうも自分自身は納得できなかった。Jリーグ発足以来、サッカーが文化として地域に根ざし始めた好例として、常に鹿島は登場してくる。その地で聞いたこれらの言葉である。天皇杯という大会そのものの存在意義にまで考え及ばさざるを得なくなってしまったわけだ。

 

■準々決勝以降の会場決定方式の実験は成功だったか?

 実は今大会から、準々決勝以降の試合会場は、勝ち上がりチームが決まったその日に決定することになっていた。この実験は、勝ち進んだチームのサポーターがなるべく応援に行きやすいように、カードが決まった上でなるべく近くの競技場に振り分けようとの配慮からだった。例えば昨年の82回大会でこんなことがあった。準決勝の京都対広島が埼玉スタジアムで、市原対鹿島が長居スタジアムでとなってしまい、観衆が2試合合計で2万人にも満たなかったのだ。このような事態を受けての柔軟な対処で、今大会前には「サッカー協会も柔軟に対処したな」と感心していた。

 で、準々決勝以降の対戦カードと観客数はどうだったか。羅列すると、準々決勝の神戸対C大阪(神戸ユニバ)6,021人、市原対清水(仙台スタジアム)5,303人、東京V対磐田(岡山県営)10,364人、横浜M対鹿島(国立競技場)16,274人。準決勝の清水対磐田(埼玉スタジアム)11,233人、鹿島対C大阪(長居スタジアム)12,203人。決勝の5万人超に比べると極端に少ない事態は、今年も改善されたとは言い難い。岡山県営といった、普段はJリーグがあまり開催されない自治体で行われる方が観客の反応が意外に良いというのは、来年以降の開催場所を考えるのに良い材料を提供してくれてはいないか。つまり、どうせ準決勝まで客足が伸びないのなら、来年は徹底してJリーグチームのホームタウン以外の地方開催にしてしまったらどうなのか。その方が喜ばれるかも知れない。

 天皇杯の存在意義については、現場サイドからも疑問の声が上がっている。この時期は各チームとも選手との来期契約をスタートしており、戦力外を通告されながらも試合が続くことになる。「ここで活躍して他チームから認められよう」とハッスルする場合もあろうが、そうでない選手もいる。現場を預かる監督も、そういったサッカー戦術以外の要素も受け入れた上で戦わなくてはいけない。ただ、ここでは選手側の立場はあえて触れずにいきたい。プロである以上、どんな状況でもファンに最高のプレーで見せるのは当然のことだからだ。

 

■意義もあるが思い切った改革を!

 ひとりのサッカーファンとして言わせてもらえば、天皇杯は意義深い点がなくもない。3回戦で市立船橋高校がJリーグチャンピオンの横浜F・マリノスを苦しめた試合など、まさにこの大会でしか見ることができないカードだ。ただ、こういった試合は少ない。ファンの視点から言えば、勝ち残りのほとんどがJ1とJ2チームになってしまう4回戦以降準決勝までは「流す試合」、つまり「元旦恒例行事(決勝)のチームを決めるだけ」の試合なのかもしれない。

 都道府県登録の全チームに出場資格が与えられ、勝ち上がって頂点を目指す天皇杯は、アマチュアチームにとっての存在意義は大きいことは十分分かる。だが、プロ選手が参加する大会になったわけだから、ここはファンがスタジアムに足を運ぶような大会にすることも一方で考える必要があるはずだ。天皇杯をプロとアマチュア部門とで分けるというのも、ひとつの方向性だろう。Jリーグチャンピオンとナビスコカップチャンピオンの戦いを元旦に「天皇杯」として行ない、前座として都道府県チャンピオンシップをやるというのも一興かもしれない。協会内でも天皇杯の扱いについて議論があるそうだ。なるべく早く現在の形を発展的解消させ、ファンの視点で楽しめる天皇杯を提示してもらいたいものだ。

 

<梶原弘樹 氏>

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/emp_cup/column/83rd/0101kaji_01.html  04/1/1

 

 

SEO [PR] 転職支援 冷え対策 オリンピック 掲示板 レンタルサーバー SEO