ヤタガラスの子供たち

24回 少年サッカーの現在地点

2004年8月11日

 毎年恒例の全日本少年サッカー大会が今年も8月2日から7日までの6日間、開催され、全国から集まった48の代表チームが炎天下の中、熱戦を繰り広げた。私も3日間ほど取材し、30チームほどを観戦したのだが、大いに驚かされたチームが1つあった。優勝した横浜F・マリノスプライマリー(以下、横浜M)である。

 昨年も観戦したのだが、少年サッカーではキック力のあるDFが前線の長身FWめがけて放り込み、そのこぼれ球をMFが拾うという攻撃パターンを採るチームが実に多い。成長度や個人能力にバラツキがある少年サッカーで勝つためには、確かにそれが一番、確実で手っ取り早いのだが、両チームとも同じ戦術の場合は、悲惨なことになる。パチンコ玉のようにボールが行ったり来たりを繰り返し、ついに耐え切れずミスが出たときにだけ得点が入るという、眠気を催されずにはいられない試合になるのだ。

 ところが横浜Mの試合を見て、その眠気もふっ飛んだ。DFラインのボール回しからアウトサイドへつなぎ、スペースがあればそのままドリブルやワンツーで攻略。これだけでも見事だが、前方へのパスコースを消されスペースを埋められた場合でも、慌てて蹴ることなくボランチやDFラインを経由して逆サイドへ展開するという、いくつかのJのクラブ(どことは言わないが)でも出来ないことを難なくこなしているのだ。ただ蹴るだけのサッカーと、多くの選択肢の中から最適なものを選んでボールを運ぶサッカー、どちらが少年期のサッカーにふさわしいかは自明のことだろう。

 

 蹴らざるを得ない側にも言い分はある。2次ラウンドで惜しくも敗退した愛媛・帝人SSの高橋和昭監督は「うちも対戦相手のレベルが低いと(つなぐサッカーが)やれるんです。でも全国ではリスクが高いし、どうしても前へフィード、となってしまう」と、こぼす。数百人規模のセレクションから選ばれているJの下部組織や、市内のクラブチームから優秀な選手を集めた選抜チームが上位進出チームの多くを占める中、帝人SSは1学年15人ほどの小規模な街クラブ。つなぎたくてもつなげないというのが本音だろう。あるチームの監督などはJクラブとの試合に敗戦した後、「Jのチームは出ないで欲しいね」と苦笑していたが、あながち冗談ではないはずだ。

 「同じ小学6年生。Jとか選抜とかは関係ない」と反論する人間もいる。単独チームで参加し、昨年は優勝、今年も2次ラウンドで横浜Mを苦しめた埼玉・江南南SSの松本暢佑監督だ。Jの下部組織が全体のレベルを引っ張り上げ、そこを倒すことが街クラブのモチベーションとなっている部分もあり、一概にどちらが正しいとは言えない問題だ。ただ、出場チーム間にあまりにも格差が存在し、つなぐサッカーが蹴るだけのサッカーになってしまうのは喜ばしいことではない。選抜チームと単独チームが混在する現在の方式は再考の余地があろう。

 

 さて、とはいえ少年サッカーのレベルが向上しているのは間違いない。かつてはベスト4に入るのが当然だった静岡県代表のチームが1次ラウンドで敗退するなど、全国のレベルは確実に均質化している。その一方で最近、少年サッカーの世界に限らず「平均レベルは上がったが突出した個人が少なくなった」とも言われるようになった。果たしてそれは本当なのだろうか? 江南南の松本監督は「突出した個人は自然と生まれてくるもので、平均レベルが上がるのは大変良いこと。昔は70点の平均の中で90点の子は目立ったが、今は80点の中で90点じゃ目立たないというだけのこと」と、その考えをきっぱり否定した。私もその通りだと思う。目を凝らして見れば、今年も素晴らしいタレントをたくさん発見できた。

 

 来年の少年サッカーからは、どんな才能が見つかるのか、今から楽しみでならない。

      

 

著者: 川腰 亮(かわごし りょう)氏

 1977年1月13日、神奈川県生まれ。2000年、報知新聞社入社。編集局電子メディア室編集部勤務。小学生時代は野球クラブ、中学、高校、大学ではバスケット部に所属。昨年からフットサルを始めたが、全然、上達しない。「子供の頃からサッカーをやっていれば…」と、いまでも悔やんでいる。

 

 http://www.hochi.co.jp/html/column/youth/2004/0811.htm   04/08/11

 

 

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