W杯の審判−その選考方法 |
1つの国からたった1人ずつしか選ばれないW杯の主審 2002年の日韓共同W杯では、審判の誤審が大きな問題になりました。一部の試合では、それによって勝敗が決まってしまうような場面もあり、試合後もサポーター達の間で大議論が行われていました。 もちろん他のスポーツでも同じですが、W杯の審判とはそれほどに重要であり、また高度な技能を要求される仕事でもあるのです。それだけに、その選考は慎重に、そして厳しく行われる必要があります。 今回のW杯の主審は、最終的に全部で23人選ばれました。23人は全て別の国から選ばれていて、1国から2人以上選ばれていることは全くありません。日本からは、上川徹さん(43)が選ばれています。上川さんは前回の日韓大会でも審判を務めた、ベテランの方なのです。 長い時間をかけて選考される審判 W杯の主審選考は、十分長い時間をかけて慎重に行われました。まずは審判候補となる44人が、昨年秋の段階で選考されています。そしてそれから本格的な選考を行い、今年の4月には本大会で主審となる23人が選ばれたのです。 主審候補の44人は、審査期間となる昨年秋から今年の春までに、審判としての技能を厳しくチェックされることになります。これはそれぞれの国内リーグの試合、そして国際試合において、FIFAからのチェックが入るのです。 それらの結果と、3月に行われる5日間の試験結果を合わせて、最終的な結果が決まることになります。 5日間の選考試験の内容 今回の選考試験は3月21日から25日までの5日間、ドイツのフランクフルトで行われました。内容は一般的な体力テスト、健康診断、筆記試験などです�B 体力テストでは、40メートルを6.2秒以内に走らなくてはいけません。しかしこれは1回ではなく、6回連続で行い1度でもタイムをオーバーすると不合格となります。その他にも、150メートル走や50メートル競歩もあります。 それから筆記試験では、サッカーのルールや英語力が試されます。英語力の試験は、今回初めて導入されたものです。健康診断では視力や聴力など、通常の審判業務がこなせるだけの適正があるかどうかが診断されます。またそれ以外にも、審判員としての適正を判断するために、心理テストも行われました。これらの試験全てで合格点を得ることができないと、W杯の審判にはなれないのです。 副審は主審が指名 こうして長い審査期間を経て、最終的に合格者である23人の主審が決定しました。そして次は副審を決める番になります。副審は主審の指名によって候補が決まります。 審査に合格して最終的に主審として選ばれた者は、3人の副審を指名することになります。その3人は、4月に主審のものと同様の選考を受けさせられます。内容的には主審の選考とあまり違いはなく、体力テスト、健康診断、筆記試験などがあります。 今回新たに採用された制度として、副審候補3人のうち2人以上が合格できなかった場合は、彼等を指名した主審まで不合格となってしまうものがあります。つまり、主審は副審指名にも慎重にならなくてはいけないのです。 W杯審判になるためには、どのような道を辿ればいいのでしょうか?サッカー試合の審判は、サッカー公認審判員という資格を持つ者が就くことのできる仕事です。現在日本には約11万人のサッカー公認審判員がいますが、W杯の審判はその頂点に立つ、まさに日本最高の審判員と言える存在です。 下の表は、サッカー公認審判員のランクと、各ランクの日本における人数です。ご覧のように、下から上へとランクが上がるほど、人数が少なくなっていきます。サッカーの審判員はまず4級審判員の資格を取ることから、キャリアをスタートさせます。4級は12歳以上なら誰でも受験でき、内容も講習中心という比較的簡単に取れるランクです。 それから経験を積みつつ3級、2級とランクアップしていきます。そして1級になってさらに経験を積むと、Jリーグの審判や国際試合の審判員として推薦を受けることができます。国際試合の審判の中でさらに実績・能力ともに優秀な者が、W杯の審判員としての推薦を受けることができるのです。 このようにW杯審判までの道のりはキャリア的にも遠いのですが、別の意味で険しい道でもあります。というのも、Jリーグの審判クラスになるまでは、審判だけで収入を得ることはほとんどないからです。そのために、他の仕事をしながら経験を積んでいくことになります。またJリーグの審判ですら、本業としてやっているのはごく一部です。また定年制度もあり、W杯の審判は45歳以下でないとなれません。 選手としてW杯でプレイすることは凄いことですが、選手だけではなく審判も、W杯に立つ者は国のトップレベルの技量を持っているのです。W杯を盛り上げるために欠かせない審判という存在に、改めて注目してみましょう。 2006年5月19日 By 鳥羽 賢 氏 |
ランク |
日本の人数 |
ワールドカップ主審 |
1人 |
国際審判 |
29人 |
Jリーグ主審 |
31人 |
Jリーグ副審 |
61人 |
1級審判員 |
約150人 |
2級審判員 |
約2500人 |
3級審判員 |
約20000人 |
4級審判員 |
約90000人 |
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