アテネで思い知らされた世界との差

2004.8.27

 アテネ・オリンピックに出場した男子の日本五輪代表は、1次リーグB組の全日程を1勝2敗で終了。最下位に終わり、2大会連続のベスト8進出はなりませんでした。

 36年ぶりのメダルをめざすと山本昌邦監督自ら公言し、ファンの期待も高かっただけに、失望された方も多かったと思います。日本にとって痛かったのは、8月12日の初戦、パラグアイとの試合で、開始後わずか5分という早い時間に失点してしまったことでした。その原因となったのは主将の那須。ボールをクリアするかどうか、一瞬のためらいが命取りとなり、詰めていたヒメネスにボールを奪われ、シュートを決められてしまいました。

 堅守で知られるパラグアイに先制点を奪われることは最もやってはいけないこと。そのことを十二分に分かっていただけに日本の選手が受けた衝撃は大きかったと思います。失点を生んだのが、それまで最も安定したプレーを見せていた那須のミスであったことも、動揺に拍車をかけたに違いありません。2年間かけてめざして来た大事な大会の出だしで、いきなりつまづいたことで日本はパニック状態となってしまいました。

 このあと日本は、小野がPKを決めていったん1-1としますが、守備の混乱状態は収まりませんでした。パラグアイにボールをキープされて押し込まれ2失点。1-3と2点リードされて前半を折り返します。布陣を変えて後半に臨んだ日本は、積極性をより全面に出し、徐々に運動量が落ちたパラグアイを圧倒。小野のPKで1点差に迫りましたが、トーレスに致命的な4点目を奪われて再び2点差とされてしまいます。81分に大久保がゴールを決め、3-4としましたが、追撃はここまで。終了寸前までパラグアイゴールを脅かしたものの、再び同点とすることができず、大事な緒戦を落とす結果となってしまいました。

 第2戦は8月15日にイタリアと対戦。日本の課題は明らかでした。パラグアイ戦の前半のような展開になることを避けること。特に立ち上がりの失点だけは絶対にしないことが選手には求められていました。しかし、先制点の重要性を選手自身が口にしていたにもかかわらず、日本は再び相手にリードを許してしまいます。ショッキングだったのは、開始後わずか8分で二度もゴールラインを割られてしまったこと。伝統的に守備には絶対の自信を持つイタリアを相手にいきなり2点のビハインドというのは、パラグアイ戦以上に衝撃的な立ち上がりでした。この時点で勝負は決してしまったと言っても過言ではありません。余裕を持ったイタリアはその後終始自分たちのペースで試合を展開。ジラルディーノに追加点を決められ、1-3とパラグアイ戦と同じスコアで前半を折り返すことになった日本は、これまたパラグアイ戦と同じく後半は押し気味にゲームを進めたものの、1点差まで詰め寄るのが精一杯。リードはおろか、追いつくことさえできないまま敗れ、早くもグループステージでの敗退が決まってしまいました。

 メダルという目標を失ってしまった日本でしたが、8月18日の最終戦ガーナとの試合では奮起しました。これまで2試合で7失点という守備陣ががんばり、ドリブルを駆使しながら、ボールを足元につないでくるガーナの攻撃を組織的な守りでストップ。前半に大久保が決めて、この大会で初めてリードを奪うと、最後までそれを守りきって、初勝利をあげました。今度こそは絶対に先制点を与えないという意識がチーム全体に浸透しての勝利。前の2試合での教訓を活かした結果でしたが、このような戦いぶりをなぜ初戦から見せることができなかったのか、そんな悔恨が浮かんでくる、ほろ苦い白星でした。

 最初の2戦で、日本は判で押したように同じ展開の試合をしてしまいました。リードを許してはいけない相手にリードを許してしまう。試合前から口をすっぱくして言われていたにもかかわらず、それを防ぐことができませんでした。ミスやツキのなさといった面もありましたが、分かっていてもやられてしまう実力の差があったことも事実です。ただ残念だったのは、そうした誤算に対処する力を選手たちが持っていなかったことでした。最初にボタンをかけ違えてしまうと最後までそれを修正できない、ゲーム運びの拙劣さが何よりも目につきました。1点差でハーフタイムを迎えていれば、後半巻き返すチャンスは十分にあったにもかかわらず、パラグアイ、イタリア戦ともに1-3で前半を終えることになってしまいました。両チームと比べてもそん色のない攻撃力を持つガーナを抑えきる守備力を持っていただけに、前半の終盤に守りに集中して相手の3点目を阻止できなかったことが悔やまれます。

 この原稿を書いている時点で、パラグアイは決勝まで勝ち進み、イタリアは準決勝で敗れ、3位決定戦に回っています。大会のベスト4に入った2チームと同じ組になってしまった日本のくじ運の悪さをファンとしては嘆かずにはいられません。最初の2戦のどちらかで、あと1点奪うか、与えずに引分けていれば、日本が準々決勝に進んでいただけに、余計に無念さが募ります。ただ、それはあくまでも結果論。数字上はわずかな差ではありますが、実際にはそれが大きな差であることを思い知らされたのが今回の五輪でした。くじ運に恵まれるとメダルも夢ではない実力をつけて来た日本ですが、優勝候補と言われる世界基準の力を持った国と直接対戦してそれを打ち破るまでには至っていません。ひとつの階段を上り、次の階段を臨む踊り場に立されているのが現状でしょうか。苦戦を強いられ、結果が出ない大会が今後も続くかもしれませんが、その過程で得たものを肥やしにして新たなステップアップを日本代表が果たすことを信じて、今後も応援を続けたいと思います。

 

 

楠瀬 元章 Kusunose Motoaki

@nifty サッカーフォーラム・マネジャー(SYSOP)

http://forum.nifty.com/fsoccer/

68年メキシコ五輪で日本が銅メダルを取った頃からサッカーに興味を持つようになり 70年ワールドカップで完全な虜に。 90年10月からサッカーフォーラム(FSOCCER) のフォーラム・マネジャー(SYSOP)を務める。

 http://sports.nifty.com/soccer/column/index.jsp?file=20040827  04/08/27

 

 

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