ヤタガラスの子供たち

34回 FCみやぎユースの「個人育成法」

2004年10月20日

 前回のコラムで「量より質」のトレーニングで全国レベルの強豪となった広島観音高校を取り上げたが、クラブユースにも独自の試みに挑戦しているチームがある。FCみやぎユースだ。NPO法人スポ−ツクラブみやぎを母体としたクラブで、設立からジュニアユースが7年目、ユースはわずか4年目にもかかわらず、今年、全日本ユース初出場を果たすなど、短期間で躍進することに成功したチームだ。

 

 全日本ユースでは2勝1敗の好成績を挙げながら、惜しくも得失点差で予選ラウンド敗退となったが、ドリブルとショートパス主体に組み立てられる攻撃は見ていても楽しく、敗れた流経大柏戦でもシュート数では圧倒。「どんなチームが相手でも個性を出させている。試合には負けたけど姿勢としては勝った」という近藤昭彦監督の言葉が印象的だった。

 

 日本サッカー協会B級ライセンスに加え、ウェールズサッカー協会、スコットランドサッカー協会の公認ライセンスを取得するなど、31歳という若さに似ず立派な経歴を持つ近藤監督のモットーは「とにかく個人を育てる」こと。「チーム作りを(ジュニアユース、ユースと)6年もやるとガチガチになってしまう」弊害があるため、「チームじゃなく徹底的に個人にこだわった」指導を心がけている。

 

 素材が分散しているジュニアユース年代ならともかく、人材の集約化が進むユース年代で、Jの下部組織ではない、いわゆる街クラブが結果を残すのは極めて希なこと。FCみやぎも「道を挟んで向こうは芝、こっちは土」という場所で、ベガルタ仙台ユースが活動する環境にあるが、流出した選手は1人もいない。「外に出るなら出てもいいんです。ただ『ウチに入ると代表に入ったり、プロになれる可能性が高い。本当にプロに行きたければよく考えろ』と言ってます」と、近藤監督も自クラブの育成には絶対の自信を持っている。

 事実、FCみやぎから名古屋グランパスユースに進んだ青山隼は主将としてU−16日本代表を引っ張るまでに成長。また、今年、サンフレッチェ広島ユースから川崎入りした西山貴永もFCみやぎの卒業生で、鋭いドリブルと切り返しが武器の好選手だ。サンフレッチェ広島ユースの森山佳郎監督が西山を評して「冗談ではなく、彼はウチに来るまでパスしたことがないんですよ」と苦笑混じりに漏らしたことがあったが、それほどFCみやぎの個性を伸ばす指導は徹底しているのだ(ちなみに今年もFCみやぎユースから何人かJリーグチームに入ることが期待されている)。

 「いくら『選手を育てよう』と言っていても、Jの下部組織だと勝たなきゃいけないところがある。それで負けると監督、コーチが首を切られて、選手が犠牲になっている部分があるのかもしれない。でもウチには『勝て』と言う上司はいませんから。向こう(ベガルタ仙台ユース)が『負けてもいい』と、ウチと同じことをしたら、施設、指導者、選手の素材で、ウチは太刀打ちできません。でも『FCみやぎに負けるな』と言っているうちは、負けないんじゃないですか」(近藤監督)。

 

 結果を求めるあまり、育成がおろそかになるそんな高体連的指導のアンチテーゼとして生まれたとも言えるJの下部組織だが、どこもまだまだ本当の意味でのプロ養成機関になるには、改善が必要なようだ(補足すると、ベガルタ仙台ユースも2年前、初のトップ昇格選手を出し、昨年はイタリアから指導者を呼ぶなど徐々に軌道に乗ってきている。また両チームの仲が悪いということもないらしい)。

 先日、行われたU−17やU−20のアジアユースでも、日本代表の個人能力はアジアですらトップクラスにはないことが改めて示された。「昔に比べ、平均的に上手い選手は多くなったが、個性のある選手がいない」という指導者の声をよく耳にする。日本サッカー協会も、ここ数年、それまでの「パスで相手を崩す」サッカーから「個人でも突破できる」サッカーに軌道修正したが、いまのところ「突破もできずパス能力もあまりない」選手が量産されている印象がある。

 

 今年の高校3年生でナンバーワンの個人突破能力を持つサンフレッチェ広島ユースの前田俊介も、FCみやぎ同様、徹底したドリブル育成に定評がある高田FCの出身である。多少の偏りはあっても西山や前田に徹底的にドリブルを極めさせた育成法は、日本サッカーの今後を考える上で、ひとつの大きなヒントになるのではないだろうか。

        

 

著者: 川腰 亮(かわごし りょう)氏

 1977年1月13日、神奈川県生まれ。2000年、報知新聞社入社。編集局電子メディア室編集部勤務。小学生時代は野球クラブ、中学、高校、大学ではバスケット部に所属。昨年からフットサルを始めたが、全然、上達しない。「子供の頃からサッカーをやっていれば…」と、いまでも悔やんでいる。

 

http://www.hochi.co.jp/html/column/youth/2004/1020.htm   04/10/20

 

 

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