2004年の「夏休み」に輝いた原石たち

─FCみやぎバルセロナ─

2004年8月27日

FCみやぎバルセロナ 強烈なチーム名とともに

 高校総体が各都道府県の持ち回り開催なのに対し、クラブユース選手権は福島県にJヴィレッジが完成して以降、そこに開催地が固定されている。今年もこの日本最大のサッカー施設において、1週間に及ぶ熱戦が繰り広げられた。グループリーグ+決勝トーナメントという、ワールドカップ方式で競われた大会の8強に名を連ねたのは、前回王者の広島を筆頭として、横浜FM、浦和、FC東京、鹿島、東京V、磐田のJユース7チームとFCみやぎバルセロナという1つの街クラブだった。

 FCみやぎバルセロナ――強烈なインパクトを与えずにはいられないチーム名である。もちろんこれは、JFA(日本サッカー協会)に登録されている正式名称。その命名の秘密について問われた選手は「いや、それを説明すると1時間じゃ済まないんですよ!」と語って逃げ出した。まさしく謎である、まさかとは思うが、何となく語感がかっこいいからと子供たちが勝手につけてしまったなんてことはないだろうとは思う。よもやFCみやぎユベントス、FCみやぎレアル、FCみやぎパルマなんかも存在するなどということはあり得ないだろう。

 FCみやぎを率いる近藤昭彦監督は、大会の目標を問われて「4強」と明言した。Jユースが大挙して参加する大会で、街クラブが「4強」を目指すというと夢物語であるかのように聞こえてしまうが、彼らにとってそれは極めて現実的な目標だった。

 実は、今からさかのぼること3年前のクラブユース選手権U−15。現在の高校3年生が中学3年生として迎えた「夏休み」における最大の大会で、このチームは見事にベスト8入りを果たしている。FCみやぎのユースチームには、当時のメンバーがほぼ全員残っており、「3年前を越える」4強進出は彼らにとっても現実的であり、同時に必然的に定まった目標だったのである。

 

個々のタレントも豊富な街クラブ

 グループリーグ最終戦において、3年前に敗れた浦和に一泡吹かせてグループ1位抜けを果たしたFCみやぎ。結果的に彼らの冒険は、準々決勝でぶつかった鹿島によって終えんを余儀なくされてしまうのだが、大会に与えたインパクトは小さなものではなかった。

 カウンター狙いで、引いて守って好成績を収めたのなら、「サッカーではそういうこともある」ということで終わってしまうのだが、FCみやぎの戦いぶりは極めて果敢なものであった。タレントも多い。

 GKの丹野研太は元U−16日本代表の選手だが、すでに複数のJクラブからの誘いがある。一見、危険な飛び出しが目立つプレーぶりなのだが、これも「うちのDFのレベルでは対抗しきれないので、リスクを承知で丹野には全部飛び出せと言っている」(近藤監督)という言葉の結果である。逆にこのリスクを恐れぬプレーを指示されることで、丹野というGKの個性をより逞(たくま)しくしているようにも感じられる。左DFの山形雄介、FWの遠藤直人も、Jクラブが興味を示す好選手。大会では1年生ボランチの香川慎司も非凡なプレーを随所に見せており、中学時代に8強に入った世代の「次」を担う人材にも事欠いていないことを、この街クラブは示唆してくれた。

 今年はクラブのOBから、西山貴永(川崎)という、初のJリーガーも誕生した。U−16日本代表のキャプテンを務める青山隼(名古屋)もこのクラブの出身である。クラブチームが持つ良さとして、しばしば喧伝される「少数精鋭」をあえて排除して、多数の部員を抱え込むFCみやぎのやり方には当初、疑問の声も挙がっていた。しかし、確実に結果を残しつつ続々と新鮮な人材を育てている現状は、そのような声を一掃するには十分過ぎるものだ。

 

29番目以降の必要性

 華やかなるJユースチームと、それとはまったく異なる形態を採りながら東北の片隅で確かに育ちつつある一つの“街クラブ”。「Jユースは、J1、J2合わせてもたった28クラブしかないじゃないか」というのは、高校の先生方がJユースを揶揄(やゆ)するためにしばしば用いるフレーズである。これはまったくその通りで、参加校4000を超える高校サッカーと、たった28クラブしかないJユースでは数の上では比較にならない。だからこそ、“29番以降のクラブ”が肝心なのである。まさしくこれに当たるFCみやぎが残した堂々たる実績は、貴重なものであり、あらためて注目していくだけの価値がある。そんなことを考えさせられた、2004年の「夏休み」であった。

 

 

川端暁彦/Akihiko KAWABATA

1979年8月7日大分県中津市生まれ。育ったのは神奈川県なので、忠誠の対象は神奈川県国体選抜。日本のユース世代へ深い愛情を注ぎ、日々その知見を広げている。最近気になることは、AFCU−17選手権に出場する北朝鮮代表について。想像するだけで胃が痛くなる日々……。『サッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画出版社)、『SPORTS Yeah!』(角川書店)、『SOCCERZ』(フロムワン)などにも寄稿

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/hs/column/200408/at00002237.html   04/08/27

 

 

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