EURO2004 ギリシャ優勝がもたらした波紋

2004.7.9

 7月4日に行われた欧州選手権決勝、ギリシャ対ポルトガルはギリシャの完勝でした。シュート数4対17。コーナーキック数1対10。ボール支配率42%対58%とデータの上ではポルトガルが圧倒していたように見えますが、実態は違っていました。ポルトガルはボールを持たされて、ギリシャの術中にこの日も完全にはまってしまった感じ。ポルトガルの決定的なチャンスといえるものはほとんどなく、ギリシャの堅い守りを最後まで崩すことができませんでした。

 結局ハリステアスがヘッドで決めたゴールが決勝点となり、1-0で勝ったギリシャが欧州選手権で初優勝。これは間違いなく史上最大の番狂わせだと思います。1992年にユーゴスラビアに代わって出場したデンマークが優勝した例がありますが、衝撃の度合いは今回の方がはるかに上でした。代替出場とはいえデンマークは、それ以前のW杯でも活躍するなど実績があり、その実力は高く評価されていました。それに比べるとギリシャは、メジャーな大会で1勝すらあげたことのない国であり、大会前に80-1というオッズ(賭け率)がついたのも無理はない、掛け値なしのアウトサイダーだったのです。そんなチームが栄冠を手にする。サッカーの世界ではこれまであり得なかったアップセットが今回起こったと言えます。

 しかし、その優勝の軌跡を振り返ってみると、開催国(ポルトガル)を破り(それも二度も)、前回優勝国(フランス)を破り、優勝候補(チェコ)を破りと、その成績は文句のつけようがないもの。まぐれやツキだけで欧州の頂点にのぼりつめた訳ではないことは、この事実が雄弁に物語っています。

 そのベースになったのは堅固なディフェンス。マンツーマンで相手の攻撃陣をマークし、デラスをひとり余らせ、スイーパーとして用いて、マンマークのほころびを繕わせました。ひと昔前のドイツを思い出させるこのクラシックな戦法が面白いように効果を発揮したことが、今回のギリシャの勝因でした。

 「自分たちが守備的なサッカーをしているとは思わない」とレーハーゲル監督は主張していますが、守備に重点を置いたサッカーをやっていたことは明々白々。彼我の能力差を踏まえ、まずは守りを固めることに徹した、現実主義的なサッカーをピッチで展開しました。「ギリシャは五輪を組織する能力には不安があるが、守備を組織する能力には全く問題ない」などというジョークが生まれるのも無理はない、1対1の強さをベースにして作り上げられた、ほんとうに見事な組織的ディフェンスだったと思います。

 ギリシャの戦い方は決して目新しいものではなく、これまでも同様の戦術を採用した、いわゆる弱小チームはたくさんありました。しかし、そのことごとくが失敗に終わり、栄冠に手が届かなかったのが、これまでのサッカーの歴史です。それが、なぜ今回このような結果になったのでしょうか。

 ひとつには、フランス、イタリア、スペイン、イングランド、ドイツといったいわゆる強豪国の選手たちが、過密日程を強いられる通常シーズンを終えたばかりで、その疲労が蓄積していたことがあげられます。週末に行われる国内リーグに加えて、週のなかばにはチャンピオンズリーグ、UEFAカップといった国際試合が行われ、週2試合をこなさなければならない選手がほとんど。1シーズンに50試合近く出場したあと、休む間もなく欧州選手権に出場することを強いられて、本来の力を発揮できませんでした。

 また、強豪国と弱小国などという色分け自体が無意味になってきたこと、かつては顕著だった国と国の間の実力差が急激に縮小していることもあります。今回の大会だけでなく、2002年W杯でもトルコ、韓国、セネガル、日本といった国々の躍進がありました。欧州のトップリーグでは国籍に関係なく、さまざまな国の選手がプレーしており、そこでもまれて力をつけた選手が、代表チームに戻ってそのレベルアップに貢献しているのです。

 さらに、外国人選手の進出が強豪国のレベル低下をもたらした側面もあります。顕著なのはドイツ。ブンデスリーガ・各クラブにおける外国人比率が高いため、ドイツ人選手はなかなか出場機会を得ることができません。これが若い選手の育成の妨げとなり、代表チームは停滞。ドイツは2大会連続でグループステージ敗退となってしまいました。

 これらはほんの一例。ギリシャ優勝がもたらした衝撃の波紋は大きく、その理由を探るべく、今後さまざまな議論が行われることになりそうです。はっきりしているのは、名前だけで結果が予測できた時代は急速に去りつつあるということ。2006年W杯では、より大きな衝撃がわれわれを待っているのかもしれません。 7月4日に行われた欧州選手権決勝、ギリシャ対ポルトガルはギリシャの完勝でした。シュート数4対17。コーナーキック数1対10。ボール支配率42%対58%とデータの上ではポルトガルが圧倒していたように見えますが、実態は違っていました。ポルトガルはボールを持たされて、ギリシャの術中にこの日も完全にはまってしまった感じ。ポルトガルの決定的なチャンスといえるものはほとんどなく、ギリシャの堅い守りを最後まで崩すことができませんでした。

 結局ハリステアスがヘッドで決めたゴールが決勝点となり、1-0で勝ったギリシャが欧州選手権で初優勝。これは間違いなく史上最大の番狂わせだと思います。1992年にユーゴスラビアに代わって出場したデンマークが優勝した例がありますが、衝撃の度合いは今回の方がはるかに上でした。代替出場とはいえデンマークは、それ以前のW杯でも活躍するなど実績があり、その実力は高く評価されていました。それに比べるとギリシャは、メジャーな大会で1勝すらあげたことのない国であり、大会前に80-1というオッズ(賭け率)がついたのも無理はない、掛け値なしのアウトサイダーだったのです。そんなチームが栄冠を手にする。サッカーの世界ではこれまであり得なかったアップセットが今回起こったと言えます。

 しかし、その優勝の軌跡を振り返ってみると、開催国(ポルトガル)を破り(それも二度も)、前回優勝国(フランス)を破り、優勝候補(チェコ)を破りと、その成績は文句のつけようがないもの。まぐれやツキだけで欧州の頂点にのぼりつめた訳ではないことは、この事実が雄弁に物語っています。

 そのベースになったのは堅固なディフェンス。マンツーマンで相手の攻撃陣をマークし、デラスをひとり余らせ、スイーパーとして用いて、マンマークのほころびを繕わせました。ひと昔前のドイツを思い出させるこのクラシックな戦法が面白いように効果を発揮したことが、今回のギリシャの勝因でした。

 「自分たちが守備的なサッカーをしているとは思わない」とレーハーゲル監督は主張していますが、守備に重点を置いたサッカーをやっていたことは明々白々。彼我の能力差を踏まえ、まずは守りを固めることに徹した、現実主義的なサッカーをピッチで展開しました。「ギリシャは五輪を組織する能力には不安があるが、守備を組織する能力には全く問題ない」などというジョークが生まれるのも無理はない、1対1の強さをベースにして作り上げられた、ほんとうに見事な組織的ディフェンスだったと思います。

 ギリシャの戦い方は決して目新しいものではなく、これまでも同様の戦術を採用した、いわゆる弱小チームはたくさんありました。しかし、そのことごとくが失敗に終わり、栄冠に手が届かなかったのが、これまでのサッカーの歴史です。それが、なぜ今回このような結果になったのでしょうか。

 ひとつには、フランス、イタリア、スペイン、イングランド、ドイツといったいわゆる強豪国の選手たちが、過密日程を強いられる通常シーズンを終えたばかりで、その疲労が蓄積していたことがあげられます。週末に行われる国内リーグに加えて、週のなかばにはチャンピオンズリーグ、UEFAカップといった国際試合が行われ、週2試合をこなさなければならない選手がほとんど。1シーズンに50試合近く出場したあと、休む間もなく欧州選手権に出場することを強いられて、本来の力を発揮できませんでした。

 また、強豪国と弱小国などという色分け自体が無意味になってきたこと、かつては顕著だった国と国の間の実力差が急激に縮小していることもあります。今回の大会だけでなく、2002年W杯でもトルコ、韓国、セネガル、日本といった国々の躍進がありました。欧州のトップリーグでは国籍に関係なく、さまざまな国の選手がプレーしており、そこでもまれて力をつけた選手が、代表チームに戻ってそのレベルアップに貢献しているのです。

 さらに、外国人選手の進出が強豪国のレベル低下をもたらした側面もあります。顕著なのはドイツ。ブンデスリーガ・各クラブにおける外国人比率が高いため、ドイツ人選手はなかなか出場機会を得ることができません。これが若い選手の育成の妨げとなり、代表チームは停滞。ドイツは2大会連続でグループステージ敗退となってしまいました。

 これらはほんの一例。ギリシャ優勝がもたらした衝撃の波紋は大きく、その理由を探るべく、今後さまざまな議論が行われることになりそうです。はっきりしているのは、名前だけで結果が予測できた時代は急速に去りつつあるということ。2006年W杯では、より大きな衝撃がわれわれを待っているのかもしれません。

 

 

楠瀬 元章 Kusunose Motoaki

@nifty サッカーフォーラム・マネジャー(SYSOP)

http://forum.nifty.com/fsoccer/

68年メキシコ五輪で日本が銅メダルを取った頃からサッカーに興味を持つようになり 70年ワールドカップで完全な虜に。 90年10月からサッカーフォーラム(FSOCCER) のフォーラム・マネジャー(SYSOP)を務める。

http://sports.nifty.com/soccer/column/index.jsp?file=20040709  04/7/9

 

 

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