強豪国を脅かす“地雷原”

2004年6月18日

■各グループに必ず埋まっている『地雷』

 今大会は各グループに『地雷』が埋まっている。まずこの地雷を踏んだのが大会開幕戦、グループAのポルトガルだった。

 ポルトガルは今大会の優勝候補で、グループAをスペインとともに波乱なく勝ち抜くと思われていた。だが、1点差ながら、内容的には完敗を認めざるを得ないギリシャ相手の敗戦。

 実力的に劣ると思われていたギリシャ相手の初戦は、ポルトガルにとってユーロ(欧州選手権)開催国特権だったかもしれないが、コリーナが主審ではそれ以上の特権は使えなかった。前大会でコリーナは、開催国オランダの初戦、対チェコ戦でオランダを勝利に導く疑惑のPKを与えたが、さすがに二度同じミスを犯すレフェリーではない。

 ギリシャという名の地雷は、さらにスペインに勝ち点3を与えることを許さず、アウトサイダーだったはずがなんと2戦を終えてグループAで首位に立っている。

 前回のユーロ2000、ホーム・アドバンテージと呼ばれるコリーナの地元有利の笛にも救われたオランダは、チェコ、デンマークという難敵相手に2連勝。大会前は優勝候補が4カ国も集まり『死のグループ』と呼ばれたユーロ2000のグループDだったが、オランダとフランスは共に2連勝で余裕をもって勝ち抜けを決めてしまった。

 3戦目、夢のカードと言われていたフランス対オランダはスペクタクルな内容にはなったもののフランスが大幅にメンバーを落としており、オランダを準々決勝以降、共催国ベルギーへ行かせるための妨害は企てなかった。その分、やっている選手たちは本気でも、生きるか死ぬかまでの雰囲気にまでは至らなかった。

 今大会のグループAは、ポルトガル対スペインのイベリア・ダービーが前回のオランダ対フランスと同じ役割を果たすと思われていた。ポルトガルとスペインは共にギリシャ、ロシアから勝ち点をフルマークで稼ぎ、2試合で予選突破を決定。屈指の好カードも消耗戦を避ける戦いになる可能性が大きかった。しかしギリシャが地雷となってグループAは戦前の予想が大きく狂った。ギリシャが最終戦、ロシアに引き分けると準々決勝進出を決定。つまりスペインとポルトガルという、大会前の予想では優勝候補と思われていた両国のうち1つが早々に大会を去ることになるのだ。

 ギリシャが果たした地雷原の働きは他のグループにもある。グループCはイタリアが大本命だが、初戦でデンマークに圧倒され、辛うじて0−0で引き分けた。ストライカー4人でブルガリア相手に5点を取ったスウェーデンという地雷が、今日はイタリアの前に立ちはばかる。果たしてこれをイタリアは踏まずに生き延びられるか!?

 グループDはラトビアという名の地雷をチェコが踏みかけ、オランダは今大会アウトサイダーと言わざるを得ないドイツの地雷を踏んでしまい引き分けた。

 グループCもDも、2戦目で勝ち抜け国が決まらない可能性が高い混戦になった。本命国に対し地雷原が果たした役割は大きい。

 

■地雷の役割を果たすことができなかったスイス

 前フリが長くなったが6月17日のグループB、イングランド対スイスを観戦してきた。観戦目的はスイスがこのグループの地雷になるかどうか。しかしイングランドは3−0と快勝し、スイスは開幕戦でクロアチアと0−0だったため、今大会はいまだ無得点。スイスのチーム力は、このグループでは劣っていたと言わざるを得ない。

 前半はスイスが健闘し、イングランドにわずか2本のシュートしか与えず、スイスは6本のシュートを放った。しかし少ない好機を生かしてイングランドは横の揺さぶりからルーニーをゴール前でフリーにし、ルーニーのヘディングシュートでイングランドが23分に先制点を奪った。

 後半は60分、ハースが2枚目のイエローカードで退場処分を受け、スイスは残り30分を酷暑の中、実力で上回るイングランドを相手に10人で戦う不利を被る。これ以上の抵抗はスイスにとって不可能だった。ルーニーとジェラードが加点し、3−0と危なげなくイングランドが快勝した。

 スイスは初戦のクロアチア戦、引き分けて勝ち点1を奪ったものの、期待と人気を集めるベテラン、シャプイサがいいところなく途中交代。むしろシャプイサが居ない方がボールの回りが良かったが、イングランド戦でもシャプイサを先発で起用した。しかし結局前半いっぱいでシャプイサはベンチに退いた。

 また何よりスイスにとって痛かったのがボランチ、初戦で退場になり不出場となったフォーゲルの不在。代役のセレスティーニが絶不調で、ミスを繰り返し、イングランドの先制点も始まりはセレスティーニのミスからだった。ここのポジションの選手がミスを繰り返し続け試合中修正できないと、さすがにイングランド相手にはつらい。

 戦術的に重要なボランチのレギュラー、フォーゲルに代わる選手がおらず、国民の期待を集めたシャプイサがブレーキでは、個で劣るスイスがイングランド相手に互角の試合を挑めるわけがなく、前半の健闘むなしく終わってみれば妥当な結果の0−3だった。つまりスイスはグループBで地雷の役割を果たすことができなかった。

 

■イングランドは、クロアチアの地雷を避けることができるか!?

 しかし地雷は1時間45分後に始まったフランス対クロアチアに埋まっていた。フランスがラッキーゴールで先制し、試合展開としてはつまらないものになりそうだったが、後半奪ったPKでクロアチアが同点にすると試合は突如スペクタクルなものになり、デサイーのミスもあってクロアチアが逆転。フランスはトゥドゥルのバックパスをトレゼゲが狙って同点を決め引き分けたが、トレゼゲが奪ったときは明らかにハンド。手にボールが当たった瞬間、反射的に手をピクッと引いたトレゼゲの正直な反応がすべてを物語っている。だが、審判が笛を吹かない以上はそれは正当なゴール。それがサッカーだ。

 試合は最後までスペクタクルを保ち、ロスタイムにはクロアチアが完全にフランスの守備を崩し決定機を迎えたが、モルナールが外してしまった。結局試合は2−2の引き分けで、クロアチアは最終戦、グループリーグ突破をかけてイングランドと対決する。イングランドはクロアチアの地雷を果たして避けることができるだろうか!? このフレーズは国名を変えれば今大会、何度でも言い回しがきく。

 グループBの初戦、世界が注目したフランス対イングランド。それをあえて外し、裏カードのクロアチア対スイスを見た。内容は既報の通り凡戦。しかし両チームが2戦目以降、フランスやイングランドと戦う試合を見るのに予備知識を付けるにはいい試合で、「スイスはシャプイサが通用しなくなっていても、それでもやはりシャプイサを起用しないと負けて納得しないのだろうな」とか、「ラパイッチが入った後半の方がクロアチアの攻めの『セット』はいいな」とか、いろいろチェックポイントには事欠かなかった。そして強いチーム相手にくせ者になりそうなのは、スイスよりむしろクロアチアだなと、巧さ、ずるさ、激しさ、選手の年といやらしさが比例する動きを見て思っていた。

 やはりグループBにも地雷は埋まっていて、それを踏んだのがフランスだった。

 強豪国は今大会、まだ眠りから覚めておらず、地雷を踏んで目が覚めるか、それとも踏んだまま大会を終えるか――そんなパターンが見えてきた。

 シャプイサを使ってイングランドに敗れたスイスは、それでもサポーターが大喜びで試合後、選手と万歳三唱を繰り返した。

 クロアチアはフランス戦では最初からラパイッチを使って、ソコタ、プルショとの攻撃セットが後半は面白かった。スイス戦でブレーキだったモルナールもフランス戦では途中から出て際どい場面にいたものの……。こんな話をポルトガルで一緒に過ごすサッカー好きと翌日話し続けるのが、大会を旅しながら過ごす楽しみ。そこにはクロアチア対スイスという凡戦を、文句を言いながらもしっかり皆で観察したという背景がベースになっている。

 サッカーに凡戦はあっても意味のない試合はない。

(中田 徹 氏)<sportsnavi.yahooより>

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/euro/column/200406/at00001105.html

 

 

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