「個」を頼るか、生かすか   6.14 デンマークvsイタリア

2004年06月15日

 

■前線3人の「個」に頼り過ぎたイタリア

 6月14日、デンマーク対イタリアは0−0のスコアレスドロー。タイムアップの笛が鳴ると、イタリアのガットゥーゾ、パヌッチ、ザネッティは顔を引きつらせながら更衣室へ直行。仲間も彼らに続いた。一方のデンマークは控えの選手もセンターサークル付近まで飛び出して行き、皆で抱き合ってから、サポーターたちと貴重な勝ち点1を奪った喜びをかみしめ合った。

 イタリアは特に前半、試合内容が悪過ぎた。前半は4−3−2−1だったが、ほとんどポジションチェンジをしなかった。トッティ、デルピエロ、ビエリ頼みの攻めをデンマークは前半、余裕を持って対応していた。

 後半は4−3−1−2のビエリ、デルピエロによる2トップにし、さらに中盤やサイドバックが前の3人を追い越していく攻めを見せるようになり、イタリアがやや攻勢で試合を進めた。57分にザネッティに代えてガットゥーゾを入れると中盤の攻めにダイナミズムが生まれ、イタリアのサッカーもテンポを取り戻した。しかし後半に入って中盤やサイドバックがよく走るようになって前の3人をよくフォローしても、元々の布陣でFWとMFの距離があり過ぎた。1次攻撃を終え、セカンドボールまでは拾えても、どうしてもそこから波状攻撃を仕掛けるまでには至らない。

 結局最後まで、イタリアは前線3人の「個」によるサッカーに頼らざるを得ず、デルピエロのようにブレーキになる選手が出てくるとそれだけで戦力が落ちてしまう。

 だがイタリアの場合、グループリーグは優勝のための準備試合。このままのペースで行けば3試合を終えるまで準々決勝に進めるかどうかハラハラドキドキの展開になるだろうが、もしグループリーグを突破できれば、そこからチーム力がグッと上がるだろう。描くシナリオはグループリーグを3分けで突破し、それから一気に世界一まで上り詰めた1982年ワールドカップ・スペイン大会のパターンだ。

 

■組織ができていれば、選手の不調による影響を抑えられるはず

 デンマークは逆に初戦のイタリア戦にしっかり照準を合わせてきた。

 デンマークは4−4−1−1による組織的なサッカーをした。ピッチ全体を見渡せばフィールドプレイヤーの10人が縦と横にバランスよく選手が配置され、パスコースがたくさんできていた。そのためワンタッチパスも可能だし、ボール支配率を高めることも可能だった。

 また、3人による速いパス回しからのサイドの突破、コンビによる守備のカバー、やはりコンビによるワンツーパスなど、マクロで見てもミクロで見ても組織的なサッカーを見せていた。

 デンマークのサッカーはコーチを目指すものならば、「一度はこういうチームを作ってみたい」と思わせるようなサッカーだったのではないだろうか。

 組織ができていれば、より「個」も生きる。右ウイング、ロンメダールは俊足を生かして右サイドを何度か突破した。オランダのPSVでは組織と個のバランスを取るのに苦心してフォームを崩しがちであったが、イタリア戦ではうまく味方も使った上で自分の持ち味を発揮していた。

 イタリアはデルピエロの不調で、11人が10人になったようなものだった。いや、もしかするとデルピエロ1人にかかる責任の大きさを考えれば、9人になったような負の影響力があったかもしれない。

 では仮に、デンマークのロンメダールが次の試合で不調になったとしよう。その場合デンマークは11人の戦力が10人の戦力に減るだろうか? ロンメダールは組織の中で最低限の仕事をこなし、試合の中で調子を取り戻そうと努力するだろう。その姿勢がある限り、たとえロンメダールがブレーキに陥り攻撃にパンチがなくなっても、デンマークの方は11人は11人のままだ。組織ができているチームは、選手の不調によるチームへの影響を最低限に抑えることができる。

 

■1992年優勝のカウンターサッカーではなく、支配による攻撃を目指す

 デンマークのサッカーは組織をベースに個人を生かすサッカー。その目標は、試合を支配して攻撃的に戦うサッカーだ。

 モアテン・オルセン監督が築くデンマークのサッカーはその背景に幾つか理由がある。ひとつには1992年、スウェーデンで行われたユーロ(欧州選手権)での優勝だ。

「あのときの優勝はカウンターサッカーによるものでした。われわれの目指すサッカーとは違います」

 とGKシュマイケルを中心に守備からの速攻で奪い取ったタイトルには誇りがあるが、そのスタイルにはオルセンは批判的なのだ。

 もうひとつの理由は、国民性だ。デンマークは今大会参加国のうちスウェーデン、ドイツと国境を接している。デンマークは特にスウェーデンとはスカンジナビア4カ国を形成している仲間同士であるが、ライバルでもある。一緒にしてほしくない。ドイツのサッカーもどうやらオルセンは嫌いのようだ。

「デンマークは、スウェーデンやドイツと同じ北欧ですが、彼らとは全然違うんですよ。われわれは『北欧のラテン』と呼ばれているんです。もっと明るい国民性ですよ。カウンターサッカーではなく、試合をコントロールして攻撃的なサッカーをしたいんです」

 イタリア戦は0−0だったが、ギマラインスの町では市民がデンマーク人に「Bom Jogo」、いい試合だったと声をかけて、オルセンが作ったサッカーを称えていた。

 イタリアに引き分け、大満足のサポーターはギマラインスのレストランとカフェを占拠。スウェーデンの快勝に歓声を上げた。

 ライバルであり、仲間であるスカンジナビアの不思議な関係。強力なアタッカーをそろえた4−4−2同士でも、サッカースタイルには、ポゼッションサッカーとカウンターサッカーの違いがある。この両チームがグループリーグ最終戦、ダービーとして戦う。

(中田 徹 氏)<sportsnavi.yahooより>

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/euro/column/200406/at00001073.html

 

 

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